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大阪高等裁判所 平成元年(ネ)432号 判決 1990年11月30日

主文

一  原判決を次のとおり変更する。

二1  控訴人は、被控訴人らに対し、金九一万九四九四円を支払え。

2  控訴人は、被控訴人らに対し、平成二年から平成一五年まで毎年一二月一二日、各金九一万九四九四円を支払え。

3  控訴人は、被控訴人らに対し、平成一五年一二月一三日、金九一九万四九五五円及び金二二九八万七三六五円に対する昭和六三年一〇月二一日から完済まで年五分の割合による金員を支払え。

三  被控訴人らのその余の請求を棄却する。

四  訴訟費用は、第一、二審とも控訴人の負担とする。

五  この判決の第二項の1は、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一  控訴の趣旨

一  原判決を取り消す。

二  被控訴人らの請求を棄却する。

第二  事実関係

一  被控訴人の請求原因

1  株式会社おかもとは、昭和五四年七月二〇日、商工組合中央金庫(以下「商工中金」という。)から、三五〇〇万円を、<1>昭和五五年一月から昭和六一年五月まで毎月一〇日に四五万円(ただし、最終回は八〇万円)宛分割弁済、<2>利息年八・一パーセント(昭和五四年九月から毎月一〇日後払い)、<3>遅延損害金年一四・五パーセントの約定で借り受けた(争いがない。)。

2  政木春子、岡本好晃及び控訴人の三名は、いずれも株式会社おかもとの委託を受け、右同日、商工中金に対し、右債務につき連帯保証をした(争いがない。)。

3  政木春子は、商工中金に対し、昭和五六年一〇月三一日から昭和六三年一〇月二〇までの間に、合計金四五九七万四七三〇円を支払った(甲一の一ないし三、二、弁論の全趣旨)。

4  岡本好晃は、支払いをする資力がない(当審証人岡本好晃)。

5  政木春子は、平成元年九月一三日に死亡した。被控訴人らは、春子の子である(亡政木春子及び被控訴人らの各戸籍謄本)。

6  よって、被控訴人らは、控訴人に対し、代位弁済金四五九七万四七三〇円の二分の一の金二二九八万七三六五円及びこれに対する代位弁済後である昭和六三年一〇月二一日から完済まで民法所定の年五分の割合による利息の支払を求める。

二  争点

次の控訴人の抗弁の成否が本件の中心的争点である。

1  (相殺契約)

昭和五八年ころ、株式会社おかもとが経営不振で倒産したとき、岡本好晃及び株式会社おかもと(代表者岡本好晃)は、亡政木春子との間で、<1>株式会社おかもとが亡政木春子から昭和五二年神戸市内の被控訴人所有ビルの地下を賃借した際に亡政木春子に交付した敷金合計一一五〇万円の八割の九二〇万円につき有する、株式会社おかもとの亡政木春子に対する返還請求債権及び<2>亡政木春子が岡本好晃から買い戻した鳥羽市国崎町字山口四番一八四の山林一八一平方メートル及び同地上建物の代金九〇〇万円につき有する、岡本好晃の亡政木春子に対する支払請求債権と、亡政木春子の控訴人に対する同日現在及び将来の本件求償債権とをその各対当額で相殺する合意をした。

2  (求償者の過失)

亡政木春子は、岡本好晃の資力状態の変化を察知したときは、速やかにその旨を控訴人に通報し、控訴人において適切な措置を採りうるように配慮すべきものであった。しかるに、亡政木春子は、岡本好晃の資力状態の悪化を察知しながら、速やかにその旨を控訴人に通報せず、漫然と商工中金に対する代位弁済を続けた過失がある。したがって、被控訴人らは、民法四六五条、四四四条により、少なくとも岡本好晃の負担部分を控訴人に請求することはできない。

3  (和議の成立)

債務超過を理由とする控訴人の和議の申立(神戸地方裁判所明石支部昭和五九年(コ)第二号)により、神戸地方裁判所明石支部は、昭和六〇年三月六日午前一〇時、和議開始決定をし、同年五月二八日、別紙和議条件をもってする和議認可決定をし、右決定は、同年六月一二日確定した。したがって、本件求償債権の内容は、右和議条件のとおりとなる。

第三  争点に対する当裁判所の判断

一  抗弁1(相殺契約)について

当審証人岡本好晃は、抗弁1の合意の成立にそうような供述をするが、あいまいである上、的確な裏付けを欠くから、にわかに右供述を採用することができず、他に右合意の成立の事実を認めるに足りる証拠はないので、右抗弁は理由がない。

二  抗弁2(求償者の過失)について

民法四六五条一項の準用する同法四四四条にいう求償者の過失とは、償還無資力者から求償できなくなったのが求償者の過失に基づくことをいうところ、右抗弁は、償還資力のある他の連帯保証人に対する求償者の過失を主張するに止まるから、それ自体失当というべきである。のみならず、亡政木春子が控訴人の主張するように岡本好晃の資力状態の悪化を察知しながら、その旨を控訴人に通報せず、漫然と商工中金に対する代位弁済を続けた事実を認めるに足りる証拠はない。したがって、右抗弁は理由がない。

三  抗弁3(和議の成立)について

証拠(乙一、二、弁論の全趣旨)によれば、控訴人主張のとおりの和議の成立の事実を認めることができる。ところで、本件求償債権のように、和議認可決定確定の前後にまたがって順次なされた代位弁済により発生し、和議認可決定の確定後に本件訴状の送達(その日が平成元年一月二〇日であることは、記録上明らかである。)による催告のなされた連帯保証人間の求償債権は、右和議条件に従い、どのような内容になるかが問題となるところ、右和議条件では、明確でないが、和議債務者に有利に、控訴人は、亡政木春子の代位弁済金四五九七万四七三〇円の二分の一の金二二九八万七三六五円の求償債務及びこれに対する代位弁済後である昭和六三年一〇月二一日から完済まで民法所定の年五分の割合による利息支払債務につき、<1>平成元年の和議債務支払日である平成元年一二月一二日を第一回とし、以後平成一五年まで毎年一二月一二日に求償金元本二二九八万七三六五円の四パーセントの九一万九四九四円宛を支払わなければならず、<2>以上の支払をしたとき、その余の債務の免除を受けられることになるが、その支払をしなかったときは、平成一五年一二月一三日、残金九一九万四九五五円及び求償金元本二二九八万七三六五円に対する昭和六三年一〇月二一日から完済まで年五分の割合による利息を支払わなければならなくなったものと解するのが相当である。しかるに、平成元年一二月一二日の和議債務支払日が既に到来したのに、控訴人は、右期日に分割金の支払をした旨の主張立証をしないから、和議条件2の免除の利益を受けられないことが明らかである。したがって、右抗弁は、分割弁済の期限の利益を定める和議条件1の範囲内で理由がある。

四  よって、被控訴人らの本件請求は、主文第二項の限度で正当であり、本件控訴は一部理由がある。

(別紙)

和議条件

債務者は和議債権者に対し、和議債務を以下のとおり支払う。

1 本件和議認可決定確定の日より六ケ月を経過した日を第一回とし、以後一年目ごとに合計一五回に亘り、毎年和議債権元本の四%相当額宛を支払う(総計六〇%)。

2 債務者が前項の支払いを終えたときは、債権者は債務者に対し、その余の和議債権元本及び利息遅延損害金の支払いを免除する。

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